告白

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「好きです」  突然、そう言われた。  小柄で長い髪を二つに結わえた名前も知らない女の子。 「付き合って下さい」  夏休みの人気のない校舎の廊下。  窓の外には青空と入道雲が広がり、野球部の練習するボールの音や声が聞こえる。  天文部の部室を出た時だった。 「遠藤くん、ちょっといい?」  新体操部の女子に呼び止められた。  その日は天文部の夏休みメインイベント、天体観測を翌日に控え、準備に追われていた。  今年は参加応募人数が増え、去年もやったイベントとはいえ、『ただの部員』から『部長』に昇格した僕は気合いが入っていた。  前任の部長は国立大志望で、受験に集中する為、3月に引退。  2年生で『天文部部長』を引き継いで、今回が『部長』としての初めてのイベントなのだ。   「何か用?」  部室の奥から望遠鏡を引っ張り出し、顧問の先生の車へ運ぶ途中だった。  別に機嫌悪いわけではなかったが、ちょっとぶっきらぼうだったかもしれない。  呼び止めた女の子-ー同じクラスの女子だ。あまり話したこともなく、名前も思い出せないー-が少し表情を強張らせたのがわかった。 「忙しいとこごめんね。ちょっとこの子の話を聞いてくれる?」  背中にいた小柄な女子を前に突き出す。  その子は彼女と同じ新体操部で、男子の間で可愛いと話題に上がる子だった。  あまり興味がなかったので名前は覚えてないが、隣のクラスで体育が合同だったので何度か見かけたことがある。  小柄でしなやかな動きをするネコ科の動物のような印象の子。  彼女は耳まで真っ赤になりながら俯いて言った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!