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「好きです」
突然、そう言われた。
小柄で長い髪を二つに結わえた名前も知らない女の子。
「付き合って下さい」
夏休みの人気のない校舎の廊下。
窓の外には青空と入道雲が広がり、野球部の練習するボールの音や声が聞こえる。
天文部の部室を出た時だった。
「遠藤くん、ちょっといい?」
新体操部の女子に呼び止められた。
その日は天文部の夏休みメインイベント、天体観測を翌日に控え、準備に追われていた。
今年は参加応募人数が増え、去年もやったイベントとはいえ、『ただの部員』から『部長』に昇格した僕は気合いが入っていた。
前任の部長は国立大志望で、受験に集中する為、3月に引退。
2年生で『天文部部長』を引き継いで、今回が『部長』としての初めてのイベントなのだ。
「何か用?」
部室の奥から望遠鏡を引っ張り出し、顧問の先生の車へ運ぶ途中だった。
別に機嫌悪いわけではなかったが、ちょっとぶっきらぼうだったかもしれない。
呼び止めた女の子-ー同じクラスの女子だ。あまり話したこともなく、名前も思い出せないー-が少し表情を強張らせたのがわかった。
「忙しいとこごめんね。ちょっとこの子の話を聞いてくれる?」
背中にいた小柄な女子を前に突き出す。
その子は彼女と同じ新体操部で、男子の間で可愛いと話題に上がる子だった。
あまり興味がなかったので名前は覚えてないが、隣のクラスで体育が合同だったので何度か見かけたことがある。
小柄でしなやかな動きをするネコ科の動物のような印象の子。
彼女は耳まで真っ赤になりながら俯いて言った。
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