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「好きです」
今年に入ってこの台詞を聞いたのは何度目だろう。
天文部の部長として今年の新入生歓迎会の部活紹介をしてから、だ。
毎年、部員勧誘の為に歓迎会という名の部活紹介の集会が4月下旬にあるのだか、その集会で『天文部部長』として壇上に上がって以来、やたらと一年生の女子から告白を受ける機会が多くなった。
それまでそういったこととは縁がなく、最初は一喜一憂していたが。
彼女達の見ている『僕』は彼女達自身が作り上げた理想の『天文部の遠藤部長』で。
実際の『僕』とは大きくかけ離れていた。
『アイドルに憧れる』ようなその感覚に、最近ではまともに受け取らず、『部の勧誘』に努めている。
お陰様で今年は女子の入部が多数で部費もいつも以上に予算を組んでもらえた。
目の前の彼女もその類いだろう。
僕は彼女の『理想』に応えるべく、精一杯の笑顔を浮かべた。
「明日の夜、青龍寺で天体観測をするんだけど」
集合場所の書かれたチラシを1枚渡す。
「…………よかったら、参加してみる?」
これで完了。
あとは現実を知って、勝手に離れていくのを待つだけだ。
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