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無言で歩き続け、太陽の下に出た。校舎と校舎に挟まれるようにある中庭。お昼休みだけど、まだ早いためか、あんまり人はいない。それとも、この暑さのせいかもしれない。近頃は本当に夏らしくなって、こうやってしばらく外にいるだけでもじんわりと汗をかくほどだった。
スカートのポケットからハンカチを出して、額に滲んだ汗を拭く。正直、クーラーガンガンの教室が恋しい。
だけど、そのことは絶対に言わなかった。言ったら、二人でいられる時間が減るのは間違いないから。
高瀬くんがベンチに座る。私もその隣に、少しだけ空けて座った。微妙な距離。だけど、高瀬くんは何も言わずに、このままの距離でいてくれる。そのことが申し訳なくて……寂しかった。
「先輩、食べましょうか」
「うん」
二人で各々の弁当箱を開く。高瀬くんは色とりどりの、お母さんの愛情たっぷりの弁当。対する私は――
「おお、オムライスですか。俺好きなんですよ、オムライス」
『好き』。その言葉に、心臓が不自然に跳ねる。私に言われた言葉じゃない。分かってる。分かってるけど、罪悪感に心臓がキリキリと締めつけられた。
私と高瀬くんは付き合っている。だけど、最初は高瀬くんの一方通行の想いで、私はフリーだったからお遊び程度に付き合い始めただけ。そんな関係、だった。
「先輩?」
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