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黙り込んだ私を不思議に思ってか、高瀬くんが私を覗き込む。頬に熱が集まるのが分かった。
……今は、私も高瀬くんのことが大好き。だけど、その想いはまだ伝えられていなかった。言わなくちゃ、とは思っている。高瀬くんは時々、とても悲しそうな目をするから。だから、伝えなきゃって。好きって、言わなくちゃって。
だけど――怖くて言い出せなかった。こんな私に、もう高瀬くんは飽き飽きしているんじゃないかって、不安だった。
私は高瀬くんを見る。真っ直ぐな瞳に、くしゃ、とした髪。私と同じように陸上をやっているため、小麦色に焼けた肌。その、すべてが愛おしい。好きだっていう気持ちが胸の底から溢れる。
……うん、いける。
「あのね、高瀬くん。私、高瀬くんのこと……すき、だよ」
高瀬くんはただ呆然として私を見つめた。
――我を取り戻した高瀬くんが私を抱きしめるまで、あと五秒。
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