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「ふふふ…。思い出していただけたようですね」
老人の嗄れた声で、私の意識は再び、狭い座敷に戻された。
まだ、頭が痛む。
「…はい。…でも本当ですか。信じられません」
ようやく声が出た。
老人がにやりと笑う。
「何も心配しなくても結構です。あなたに売ってもらうのは、悪夢ですから」
「…どういうことですか」
「世の中には、悪夢を好むお客様もいらっしゃるのですよ。私は夢の取引を手伝っているのです。あなたから受け取った悪夢は私が購入者に受け渡します。さあ、どの悪夢にしますか」
私は、今までの夢を思い出すことができなかった。昨日見た夢も覚えていない。
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