第一章

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 きっと男子の誰かが、恵に嫉妬して嫌がらせをしているのだろう。愛ちゃんとこうして教室の隅で話しているのだって、相手が例え知朗だったとしても快く思わない奴も居る。現に知朗も他の男子の視線を感じていた。  恵なら尚更なのだ。 「恵君は目立つからさ、誰か嫌がらせしているのかも?」そういうと、愛は「嫌だな、そういうの、以前はこんな事無かったのに」と、憂いを帯びた瞳をふせた。  全部、恵の所為じゃないか。知朗はそう思ったが、そんな事を口走った日には女子から総スカンを食らうのは目に見えている。だから言葉にはしないでおく。 「僕も気を付けておくよ」知朗の言葉に、「お願い。何かわかったら教えてね」と、言った愛の言葉が、知朗には愛との距離が少し近付いた気がして、嬉しかった。そして、恵も偶には役に立つんだな。そう心の中で苦笑していた。
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