第一章

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 アイツは六月にやって来た。 「若居(わかい)(けい)君、帰国子女です。短い期間だけど仲良くしてあげてくださいね」  学級担任の人吉(ひとよし)先生に紹介された時期はずれの転校生は、みんなとは何処かしら違う雰囲気を漂わせていた。  青白い顔に長髪、線が細い如何にも都会っ子の恵が転校してきたのは、夏休みも押し迫った六月も半ばの事だった。  僕、鈴木(すずき)知朗(ともろう)小学六年生が住んでいる鹿児島(かごしま)伊佐(いさ)市は総人口二万六千人程の地方都市だ。九州の南部、鹿児島県の北西部に位置する。鹿児島(かごしま)熊本(くまもと)宮崎(みやざき)、三県が隣接し交通が交わる場所、自然豊かで歴史を感じさせる町、その中心部に僕の通う小学校はある。
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