第一章

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「アイツ調子のってんな」  東寺(とうじ)義男(よしお)がそう言う気持ちもわからないでもない。 女子に囲まれても照れ隠しひとつしない恵に、男子全員が嫉妬している事だろう。  次は体育、クラスでも中心的存在である知朗の得意科目だ。 「1m40cm!」「凄~い!!!」  走り高跳びのバーをしなやかに、その細い肢体をくねらせ、まるで水の中を縦横に駆け抜ける魚の様に見事に掠めてゆく、そして軽々とバーを跳ね越える恵に、男子たちでさえも羨望の眼差しを送っていた。  100m・800m・走り幅跳びと恵と知朗はいい勝負だったが、注目を浴びるのは何時も恵ばかりで、流石の知朗も良い気持ちはしなかった。転校生は特別に見られるものだけれど、しかし恵のそれは本物であると、誰しもが認めざるを得なくなっていた。
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