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厚い壁から顔を出すと、そこには見慣れた街並みが広がっていた。 いつも通りの景色ではあるが、深夜だからだろうか。雰囲気が全く違う。普段から特別賑やかな街だったという訳ではないが、やはり人の気配があるのとないのとでは雲泥の差だ。あまりの静けさに気味の悪さすら感じてしまう。深夜の街を歩いた事がない訳ではないが、その時は周りに友人がいたからこのようには感じなかったのだろう。 しかし、だからといってこの夜間飛行を止める気はない。 「学校の辺りまで行ってみるかな~」 俺の通う高校までは自転車で15分程度。空を飛べばもっと早く行けるかもしれない。 そう決めると、俺は学校の方向へと進み始めた。いつも通る交差点や友達の家をスイスイと追い越して行く。毎日のように俺を苦しめていた開かずの踏切も、空からなら僅か一秒で通り抜けられる。こんな事ならこれからは空から登校したい。そうすれば遅刻を恐れて赤信号を渡る事も、踏切のバーを跨いで渡る事もないのに。 なんて不満を垂れ流しながらも、学校まで残り半分を切った時だった。 「…ん?」 街灯の上に一人の少女が座っているのが見えたのは。     
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