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「死ぬまで一緒と……一緒と言ったじゃない……」
と、呻いた。盗み聞いているこちらの背筋が凍るほど恐ろしい声だ。
言われている本人は直立して微動だにできない。
「わかったわ。……でも、いつか迎えに行くから」
なぜか女は急に穏やかになった口調で、男に語り掛けた。
しかし、それが妙に気味悪い。私は改めて、ぞっとした。
外は大雨で雨音が凄い。なのに、女の言葉は私の脳内に直接語り掛けてくるように響く。
なんなんだ。奇妙な感じがする。軽い吐き気さえ覚えるこの感覚。
なにかおかしい。なにか……。
私はカーテンを急いで閉め、震える身を抱きながら後ろずさった。
すると、
「ぎゃああああああーーーーーーーーーーー」
雷の音かと聞き違えるかのような悲鳴が、窓の外から響いた。
私は慌ててカーテンを全開にした。
そして白バラの生垣を見ると、そこには……
うつぶせに倒れた男。ぴくりとも動かない男が雨に打たれていた。
傍らに立ち尽くすのは女。その手には、ギラリと光る刃物が握られている。
雨粒が刃物を伝って白バラの上に滴っている光景は、一瞬で私を恐怖の底に突き落とした。
白バラに小さな赤い点がボツリポツリと現れ、小雨に滲む。
「なんてことだ……っ! おい、お前! なんてことを……!」
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