バラ園の密会

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私は窓を開け大声で叫んだ。 室内からの明かりに照らされ、惨状がより鮮明になる。 刺された男と刺した女。二人は微動だにしない。 「おい!」 私は喉がからからになるくらい大声で叫んだ。けれども、女は無視を決め込む。 「お、おい! 誰か! 誰か!!」 私は今度は室内に向かって声を上げたが、真夜中だからか誰も来ない。 再び窓の外を見下ろすと……なんと、女は穴を掘っていた。 「お前! なにをしているんだ!!」 女は無言で白バラの根元を素手で掘る。一心不乱に土を掻き上げ、柔らかい手が傷つくことも厭わない。 「やめろ! そいつを埋めるっているのか?! ふざけたことを……!」 私の忠告を無視して、女はとうとう大きな穴を掘り終えた。 そして、血と雨に濡れた男をずるずると引っ張って、穴に落とし込む。 途中、男の顔から眼鏡が滑り落ちた。女はそれを地面から拾ってじっと見つめる。 「何を考えているんだ! お前のやったことは私が見ていたぞ! 決して逃れられないからな!」 私が興奮して叫ぶと、女はようやく私の方へ顔を上げた。 今は真夜中。あたりは真っ暗なはずなのに、女の顔がはっきり見える。 そう、はっきり見えて……私の心臓は凍り付いた     
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