見知らぬ無人駅

2/3
前へ
/3ページ
次へ
仕事帰り疲れていた女は電車の中で寝てしまった。 女が起きると、見知らぬ駅のベンチで寝ていた。 「あれ?電車に乗っていたはず…」 そうして女が起き上がると、隣に小さな男の子が座っていた。 「君も迷ったの?」 急に現れた男の子に女はびっくりした。 すると、男の子は続けて言った。 「誰かに呼ばれたみたいだけど、君はまだここには来ちゃいけない人だよ」 女は男の子に聞いた。 「でも、私は電車に乗って寝ちゃってここにどうやって来たか分からないんだけど、あなた知ってるの?」 そう、女が聞くと、男の子は女の方を向いて言った。 「知っていたら僕もとっくに帰ってるよ」 そう言われた女は納得した。 「たしかに、でも君はずっとここにいるの?誰かを待っているの?」 すると男の子が答えた。 「そうだね。僕の事を覚えているかすら分からないけど、僕は約束したから待っているんだ。」 そう言う、男の子に女は見覚えがあるような気がしたが気のせいと感じ返事した。 「約束?」 すると、男の子は話し始めた。 「僕はある女の子と約束したんだ。終電の電車に乗って僕と一緒にここから逃げようと、僕とその子は好き同士だった。けれど、僕とその子には身分の差があり、友達として接することさえ禁じられていた。そんな日々に嫌になり、僕と女の子は2人で逃避行することを決めたんだ。けれど、彼女は来なかった。僕は1人終電に乗り都会に出るはずがここに迷い込んだんだ。」 その男の子の話を聞くと、女は突然涙した。 「優作くん……なんだ……」 そう言う女の方を向き男の子は驚いた。 「どうやら君を呼んだのは僕だったみたいだね、明ちゃん」 女は涙を抑え静かに話し始めた。 「あの日私は終電が待つあの駅に行き優作くんと共に街を出るはずだった…でも私が出て行く所を親に見つかり部屋に閉じ込められ出れなかった。そして、私は約束を破ってしまった。私は病院の家系に生まれた娘、あなたはボロボロの家に住む貧乏な家に生まれた男の子、今思えば格差は歴然だった。小学生にはそんな格差なんて分からずにまっすぐ優作くんを好きでいた。その翌日、あなたは行方不明になってかれこれ20年……」 女はそう言いながらまた泣き出すと、男の子は女の肩をポンポンと優しく叩いた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加