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「そもそもお前ら、何なんだよ」
「さっきから言ってるじゃない。あなたの青タンよ」
「何でそれが人になるんだよ」
「それは私にも分からない。それより私に聞かせてちょうだい。私の生まれた、その左膝の理由」
「理由ねぇ」
そう、あれは晴れた日の事だった。
「にゃー」
帰宅途中、公園で木から降りられなくなった猫を見つけるという、ありそうでないレアなシチュエーションに出くわした。
一陣の風が吹き、木が大きく揺れる。
猫が落ちる。危ない。
そう思った時には、俺はジャンプしていた。
見事空中で猫をキャッチ。
片膝をつくように着地。
そして膝をガン。
「大きめの石がたまたま転がってたんだ。あれさえなければこんな怪我」
「無様ね」
反論したいけどできん。
「でも、良かったわ」
「え?」
「だって、その猫タンを助けたから私が生まれたんでしょ? あなたの優しさが、私の生まれた理由。ちょっと、嬉しいかな」
ありがとう、と青タンが言う。
先ほどの横柄な態度とは違い、ちょっとはにかんだ笑顔がとても可愛らしかった。
「ねぇねぇ、わたしは? わたしは?」
とそこに、羨ましそうに妹の赤タンが出生の秘密を聞いてくる。
「あーいや、お前のはこぎゃんッ」
青タンが手首をきかせ、フリッスビーの要領で飛ばした灰皿が見事俺の額に直撃する。
「あなたには少し事情があってね。でもいつか話すわ。お姉ちゃんを信じて」
「うん、わかった!」
青タンが見事なお姉ちゃんオーラで妹を丸め込む。
こいつ隠蔽する気だ。
「幼女とてもう我慢ならん」
俺の頭の横に転がった灰皿を手にとると、青タンの右膝めがけてお見舞いしてやる。
「ぐぉおー」
青タンがのたうち回る。
思い知ったか。これが右膝の仇だ。
我ながらしょうもない復習を遂げた瞬間であった。
しかし、そこにもう一人の影が現れる。
幼女の青タンより更に幼い、そんな幼児が突如現れた。
「あの、青タンさん。この子は?」
嫌な予感がして、同じように地面に横たわる青タンに聞く。
青タンを見ると、膝にうっすらと青あざが見える。
「パパ、ママ」
幼児の発したその言葉に、俺は真っ青になるのであった。
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