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『そこで貴女には現在請け負われているオースの頻出現象及び鬼種暴動テロの調査に加え、最も終告神と疑われるその少年に接近又は接触を試み、動向の監視と本件への関与の是非、ひいては其の存在の脅威を見極めて頂きたいのデス』
――つまり、ここに写る少年がもし、彼の災厄神であった場合、此れを排除しろ、と。
少女は鼻白んで、この日三度見となるであろう写真へ、冷ややかな視線を落とす。
食品スーパーを背景に、食材の入ったビニール袋を提げた姿が妙に癇に障った。やはり何度見ても、ただのニンゲンである。
一息。深い呼吸で胸を落ち着けてから、少女はおざなりに応えた。
「了解しました。どうせ訊いたところでロクに答えてはくれないんでしょう?」
『いやはや、物分かりが早く痛み入りマス。賢い方は好きデスよ?』
少女は依然不服そうながら、顰めた眉で承引する。
気になる点や信じ難いことはある。が、それを口にしたところで、彼らにとっては些細な事であり、立場上でも無意味なことでしかない。
よって言われた通りに実行する他に、少女に選択肢はなかった。
『入島諸々の手続きは既に済ませておりマス。貴女はこれより″誘尊音″を名乗り、件の調査及び監視に専念してください』
「根回しの早いことで」
『いえいえ、時は一刻を争いマスので。これも全ては、我々の安寧を揺るがす、審判の再臨(トワイライト)を防ぐためデス』
それを聞き入れた瞬間、少女の内で何かがはち切れた。
「……ははっ、冗談がきつい。まるで他人事ね」
胸中で沸々と覗かせる激情から自然、少女のか細い喉から乾いた嘲笑が生まれていた。
――黙って聞いていれば、どこまでも上っ面だ。
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