序章 因果の始まり

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 根暗と弟に言われたことが癇に障ったのか、『ア?』と例の男には普段見られない怒気を含んだ声が聞こえた。  どうやらこっちの方は他の姉兄とは違い、プライドが一味も二味も高い輩らしい。  物言いから察するに気構な人物であるように思えたが――そんなことよりも。 「疑問視……?」  少女はそこはかとなく違和感を覚えた単語だけを抜粋し、反芻した。  彼等は予め「これまでの報告書を見る限り」と言っていたのだ。  つまり、これまで積み上げてきた実績を見れば、疑問視も何もする必要のない問題であるはずなのだ。そう、〝これまで通り〟ならば。  怪訝そうな面持ちの少女に『アァ、そうデスねぇ』と思い出したかのように例の男の意識が少女に向き直った。 『実は、少し興味深い情報があがってきておりましてねぇ』 「興味深い、情報……?」  再びオウム返しを繰り返した少女に、彼等は難なく応え、問うた。 『――終告神(エピロゴス)、をご存知デスか?』  男の唐突な質問に、少女は小さく息を呑み、柳眉を少し固くした。 「話だけは。十年前の【神々の大災禍(カタストロフ)】で各神話勢力が群を成して争う中、災厄の象徴たる七の眷神を従え、破滅と殺戮を以って、数多の名立たる神々を相手に単身で赴き、無差別に屠っていった史上最強にして最凶のまつろわぬ神、と」 『そうデス。戦火の中心に在り、悲劇の火種と成った名無しの災厄神。なのに彼の神に関する情報は容姿詳細共に一切として不明。目撃者が語る証言も千差万別、その姿は老若男女と暇がない』
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