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過去には特殊捜索隊が編成され、あらゆる手練手管を駆使して終告神捜索及び抹殺活動が秘密裏にも大々的にも行われたわけだが、結果は今でも容姿詳細共に不明と綴られる通りだ。
終告神が確認されることはなく、その行方も十年前のカタストロフ終戦を境にバッタリ途絶え――かくして、終告神の存在は都市伝説となり、史上最凶の悪神は夢想の産物となった。
今となっては、其の神を信じる者はいない。他愛のない世間話や駄弁りの話題繋ぎとして軽薄に口にされるほどに希薄な、面白おかしい日常的都市伝説と成り下がっている。が――
『そんな、忌まわしき悪神にまつわる面白い情報が浮上しているのデスよ』
どこか含みのある笑みで口ずさむ御簾の向こう側、何かがこちらへ滑り込んできた。写真だ。一枚の写真が少女の足元で花にとまる蝶のようにふわりと舞い降りる。
神妙そうに眉を顰めつつ、少女はそれを手に取り、中身を覗いた。
「……コレは?」
『彼の者は明星悠麻と申す少年。国立弥代大学附属国際高等学校に通う学徒であり……――彼の災厄神、終告神最有力容疑者とされる少年デスよ』
「なっ、えっ………………は?」
形になりきれなかった呼気が、小さな感嘆符となって口端から漏れる。
――コレが、あの史上最凶と謳われる災厄神……?
少女はもう一度、画像に視線を落とした。じっくり舐めまわすように。きっちり値踏みするように。とっくり細部まで目を配って。
詰襟の学生服をかったるそうに着崩す心持ち背の丸い少年。眠たげに細められた眼は俗に三白眼と呼ばれるものでお世辞にも愛嬌のあるものではない。
カメラに焦点が向いていないことから盗撮と容易に推察されるが、その盗撮の目にも気づかぬほど注意力に欠けた、そしてあまりに無防備な体裁で――それは正真正銘紛れもない人の仔であった。とてもではないが彼の災厄神とは俄かに信じられなかった。
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