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「ちょ、ちょっと待って。そもそも終告神は都市伝説の類では……?」
分かりやすく狼狽する少女の疑問に、しかし一同の首を振る気配があった。
『いいえ、終告神は実在します。我々の少なくない同胞も彼奴の悪逆なる非道の手に掛かりました。いま現在都市伝説として成り下がっているのは、その存在を明らかにしきれていないことも一つですが、何よりもその新たな勢力を巡っての紛争を防ぐためでもあります』
応えたのは女の艶やかな声。先ほどまでとは打って変わって、冷静で厳かな口調だ。
「彼の神の力そのものと、それを何処かの魔術結社や新手の神話勢力かが懐柔して独占することを恐れて、意図的に情報統制を布いて終告神を都市伝説のモノと捏造した、と?」
『然様でございます』少女の補足に、女は肯定をしてみせた。
しかし、ここで問題になるのが、何故このタイミングになって情報工作まで布いたそれに触れるのかだが、その疑念にはすぐに例の粘着質な男が代わって答えた。
『貴女も知るところであると思いマスが、三年前の【アドリア海の大抗争】にて起きた都市消滅事件。これを皮切りに世界各地では不可解な事案が乱発しているのデス。そして現在、日本周辺を中心にオースの異常頻出や鬼種による無差別暴動テロが確認されていマス』
「……それらすべてが終告神の仕業だと?」
少女は暗に疑う。それはあまりにも荒唐無稽すぎるのではないか、と。
そんな少女の内心を汲んだように先客の男は『いえ』とある種の肯定を示し、
『さすがに我々も、それら全てがあの悪神による神業とは考えておりません。が、各所に散りばめられた状況証拠が、彼の神を仄めかすようなものばかり。それもあからさまなほどに』
『故に、不気味的であり危惧すべき案件であると我々は判断したのだ。ここまで一貫的な状況証拠を目の当たりにしては、動かぬわけにもいくまいにな』
粘着質な男の後に、気構の人物が辟易とした息を吐く。
なるほど、確かに筋を通そうと思えば道理。少なくとも彼の神と何かしら絡んでいることは間違いないだろう。
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