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ゴーレムバックライト
人の存在価値はAIができるまでである。
それは僕たちが決めたルールのはずだった。
だけど、目を覚ましてみるとAIは出来上がっているのに人はうじゃうじゃいる。
一体いつからルールは変わったのだろうか?
まあ、いいや。
僕は興味ない。
ただ、眠れればルールなんてどうでもいい。
逆光に映し出された緑は本来の色味を失くし黒く染まっていく。
さてどうしたものか?
人間の世界に干渉できるのは人間だけ……。
律儀にルールを守るのは僕だけか。
じゃあ、人間に動いてもらうとしよう。
ゴーレムバックライト
8月15日18:00
本来であれば夏休みなのだが、俺は学校の食堂で時間を潰していた。
「あれ? キョウジマ先輩じゃない?」
「うそ? どこ? 本当だ! トウヤ様が……」
話したことも見た事もない女学生が俺の名前を呼んで騒いでいる。
人の顔がそんなに珍しいのだろうか?
金切り声のする食堂から足早で立ち去り、俺は校舎裏に向かった。
日の光が落ち始め、赤く染まった艶やかな光は桜の木を美しく際立たせる。
花はなく木の種類もあまり知らない俺が桜とわかるのはその木を眺めることが日課になりつつあったからだ。
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