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「さて、思い出したかい?」
ヒカルの声が脳内に響く。
「今回、君に与えられた選択肢は母を殺すか? 妹を殺すだか?」
一瞬、耳を疑った。
「君が母を止めなければ妹が死ぬ」
どうしてそんな事に?
俺の疑問はヒカルがすぐに答えた。
「地震があっただろ? 会場に早くついている場合は君の妹が地震の被害者だったんだよ。あの時、君の妹は母が来ない事に涙してずっと外で待っていた。それで地震の難を逃れるんだよ。母が会場にいる場合は控室にいて天井の落盤により死亡となっているね。人間の命は儚いものだね」
……。
「さて選んでくれたまえ」
俺の脳裏はすぐさま両方救うための算段を練り始める。
しかし、ヒカルは無情にも俺の考えを見透かすように言葉を並べた。
「まさかとは思うが両方救おうとか思わないでくれよ。僕が両方殺すよ」
思考が停止する。
こいつはもう一度、俺に家族を殺せというのか?
違う。
あの時よりももっとたちが悪い。
どちらかを選んで俺が殺すんだ。
ダメだ。そう考えるともっと頭が回らない。どちらかを救うんだ。
早く……。早く決めろよ。俺……。
俺は選べずに震え始める。
すると母が俺を優しく抱きしめてくれた。
「やっぱりさみしい?」
さみしい。
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