0人が本棚に入れています
本棚に追加
何度も何度も念押しをするゴウに片手をあげその場を去る。
内心は震えていた……。
その時に何もしない俺が、ライカに何か言える訳はなかった。
脳裏に焼き付いた記憶に思わず、顔が引きつる。
しかし、時間はあまりないはずだ。
そろそろライカが思いつめた顔でやってくる。
心臓が高鳴った。
気を紛らわすために俺はヒカルに呼びかけた。
「選択肢は?」
「その女が君の彼女になるかならないかだ。君の本音を言えばその子は君のものになるよ」
想像はしていたものよりハードルが圧倒的に低い?
「君が決める事だ。まあ、でもこんなチャンスはもう無いよ」
何度も思っていた。
あの時、あの瞬間に一歩踏み出す勇気があれば何か変えられたのか?
その答えを知る事ができる。
いや、こいつの言葉が絶対なら既に分かっている。
ただ、もし変える事ができるというなら……。
ゴウとライカが築き上げた歴史が無かったことになる。
それは……。
俺の考えを遮る様にライカが姿を現した。
この頃のライカは長い髪を真っすぐに伸ばし上品にしていた。
もともとライカは化粧をしなくても十分綺麗なのだが、この頃が一番好きだった。
ゴウと付き合う事になると長髪をバッサリと切り、爽やかでボーイッシュな印象に変わる。
最初のコメントを投稿しよう!