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二人と談笑をしていたのだが、
ライカがナツミに何か耳打ちをするとナツミはうんうんと頷く。
「兄さん! ファイト!」
捨て台詞を残し、その場から元気よく去ろうとした瞬間。
ナツミの顔が強張った。
「なに? 今の?」
ナツミは桜の木の方を振り返り何かを探っている。
「ナツミどうした?」
「今、男の人の声で変えたらダメだって聞こえなかった?」
「えー。ナツミちゃんやめてよ。怖いよ」
「……ごめんなさい。嘘です!」
「もう!」
いや、この顔は嘘じゃない。本当に聞こえたんだ。
だが、俺には聞こえていない。
変えたらダメ?
まるで俺に言っているような言葉。
「じゃあ兄さん! ライカさん!」
ナツミは手を振り小走りで帰宅していった。
……。
変な間ができてしまった。
「あのね? トウヤ。」
口火を切ったのはライカだったが、俺はそれを遮る。
「ライカ! 実は聴いて欲しいことがあるんだ」
「……何?」
俺は……。
お前の事が好きだ。
「ゴウはいい奴だ。お前を絶対に幸せにする」
「ど、どうして……。トウヤ! 私は!」
ライカはそれ以上何なにも言わないまま、涙を流し、その場から走り去った。
「これでいい」
パチン!
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