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指のはじける音がすると俺はヒカルの書斎に立っていた。
「君はバカだね。どうして変えなかったんだい?」
母の手紙に書いてあった言葉が頭をよぎった。
誰がの幸せを心の底から祝える男の子になってね。
「俺が創る幸せの為に本当はあったゴウの幸せを奪うのは間違いだ」
「何を甘っちょろい! 望めば、手に入る母の愛と愛する者の心。それをいらないというのか?」
「ああ、欲しいさ。でも犠牲の上に成り立つ過去を俺は改変したりはしない!」
「もう一度、もう一度チャンスをやろう!」
ヒカルは俺に手を差し伸べる。
「いらない!」
伸ばされた手を振り払うとヒカルは体勢を崩し、地面にへばりつく。
「せっかく僕が用意してやった道だぞ?」
「俺の道は俺が決める」
今度は俺がヒカルを見下す。
「なら次の後悔を……」
「俺にもう後悔はない。最初の選択肢を答えてやるよ。俺は後悔した運命を変えない」
「バカな、人間が……。人間ごときが欲に勝てるというのか?」
「さあ、俺は選択した。もうそろそろ帰してくれ。行くところがあるんだ」
ヒカルは地面に伏せたまま、急に笑い始める。
「ふふふ。ならお前はもういらないな」
ヒカルは黒い光を全身に纏うと風が吹き荒れ、書斎にあるものを風で吹き飛ばす。
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