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光源の方を見てみると綺麗な緑色の石が落ちている。
普段なら絶対しないが、俺はその石を拾ってポケットにしまい込んでいた。
「兄さん? 何してるの?」
「別に。家に帰るか?」
「うん。送ってくれるの?」
「ああ」
二人で駐車場の方に向かって歩き出す。
「ありがとう。兄さん」
「お前、一人だと危ないからな」
「その優しさをライカさんに向けられてたら……。あっ。ごめん……」
無表情とよく言われる俺のわずかな顔の歪みをナツミは読み取る。
ナツミはばつが悪そうに下を向くと口を閉ざした。
「あいつらが付き合って何年が経ってると思ってるんだ? もう気にもしていない」
口でどれだけ嘘を塗り固めてもナツミは分かっている。
これは俺の薄っぺらいプライドを守るための答弁。
ナツミはそれ以上何も言わなかった。
……。
同日 19時
ナツミを車で家に送り届ける。
家の明かりはまだついていない。
父さんはまだ帰ってきていないという事か……。
家の前の道路で車を止める。
「兄さん。ありがとう」
「ああ。それより、明日も行くのか?」
「うん。」
「じゃあ、10時に迎えにいくよ」
「ありがとう。じゃあ、帰り道に気をつけてね」
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