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視界がある程度、見え始めると声は聞こえなくなった。
ここは?
視線を前に向けるとどうやら書斎の様な所に倒れ込んでいたようだ。
まだ、ぼやける目で見渡すとアンティーク調の家具が並び、多数の本が見える。
奥の方をよく見てみると俺と同年代のどこにでもいそうな青年が悠々と椅子に座り、俺を見下していた。
「やあ、人間」
「お前は……」
「僕は……ヒカル」
「ヒカル?」
聞き覚えはないし、どうやら俺の知り合いではなさそうだ。
「本当は感動のご対面なんだけど、今の君は分からないだろうね」
「何のことだ?」
「いずれ分かるよ」
ヒカルは椅子にもたれかかると足を組み替えた。
「君はここをどこだと思う」
「え?」
どこと言われても想像はつかない。
見た事のない書斎。
なぜ、こんなところにいるんだ?
「流石、人間、都合の悪いことには目をつぶる」
癪に障る言い方だ。
分かっているならさっさと教えろよ。
「人間は答えが分からないとすぐに投げる。全く成長しない生き物だ。特別に教えてあげるよ。君たちの言う所のあの世というものだ。君は死んだんだよ。」
あまりにも唐突で言葉が出なかった。
あの世なんていうものが存在するのか?
「君は察しが良いと聞いていたんだが、所詮は人間か」
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