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会話に入って来たのは、ショートカットの真面目な方の友達、マイだった。マイは参考書をぱらぱら開いている。
「万が一じゃない。私たちが生き残るの確率は、30%だよ。百分の三十!」
私は訂正する。
この前まで、隕石が地球にぶつかる確率が40%だったのに、そのパーセンテージはだんだんと上がり、今や70%にまでなっている。私が大人になれる確率は、30%。
「ま、いいじゃん。今をおう歌すればさ」
カナはにこりと、マイの参考書を無理やり閉じさせた。
「ちょっとー」マイの不満に耳をかさず、カナは「カラオケいこっ」と私たちの手をひっぱって立たせた。
三人連れ立って歩いていると、前から先生がやってきた。遠くからでも、もうシルエットで分かる。
「お、お前ら真っすぐ帰れよー」
先生はわざと私を見ないで、カナに声をかけた。最近先生は、私を避けている。
「えー。カラオケ行くんですぅ。先生も行く?」
「行かねーよ。俺はまだ仕事があるの。高校生じゃないの」
すれ違っていく先生の背中に、私は声をかけた。
「大人ってつまんないですね」
先生は顔だけで振り返る。今度は私の方を、逃げずに見た。
「あぁ、そうだよ」
そうして、もうこちらを振り返らずに、廊下を進んで消えていった。
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