そのもの、青き淵より

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”ううむ”さすがに、人間を長く遣っていると、目に疲れがたまってくる。まだめがねを使うとしてではないが、思わず目頭を押さえる。  しかし、それは、まさにトルテカの人たちが、”歴史から学んだ”ことなのではないだろうか。それに翻って、わが国はどうか・・極右勢力が今、政権与党についているという恐るべき事実があった。あの日本のいった侵略戦争を、”義挙”と考える政治家が、戦後半世紀を越えて”ついに”政権を”取り戻した”格好になっている。  東丈は、自分が政治的に動くタイプの人間ではないと自認しているが、それにしても、このきな臭さを剣呑と考えている。しかし、これは、健全な庶民感覚というものだろう。正直言って、先の大戦のときは、何もわからず、熱狂した庶民は最終的に、自分たちのしている侵略戦争を邪魔する悪鬼としてアメリカとの無謀な戦争に突入してしまった。その結果が、焼け野原となった国土と無数の死者の山であった。それだけの犠牲を払っての反省を持って望んだ戦後のはずなのに、そのための不戦の誓いだったはずなのに。  彼らは、そんなものはアメリカから押し付けられた”間違った思想”であるといってはばからない。その呪縛を払うことで、今の日本の閉塞感を打開できると説く。  しかし、本当にそうなのだろうか。  しかし、多くの、閉塞感を感じるものたちの多くが、その言葉を信じて今の政権党に投票したもの、偽らざる事実。それも、厳しい現実だった。  しかし、超常現象を研究しながらわかったことは、”間違った思想”に囚われる人間の哀しさだった。  それは、理性を超えた”悪霊”とでも言うしかない存在に、憑依されたとしかたとえようの無い状況に、心のバランスを崩した人間は陥るということなのだ。過度の怒りに落ちた人、過度の欲望に落ちた人、過度の悲嘆に落ちた人、過度の怠惰に落ちた人が、だ。  あるいは、心のバランスを崩すと、体のそれのように、それを意識しなければ倒れるしかないのだ。トルテックのパラサイトはテスカポリトカを信望する好戦派の兵隊の暗喩でもあるのだろう。だとすれば、今の日本はまさにテスカポリトカに乗っ取られようとしていると言ってもいいのではないだろうか。
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