深夜のドライブ

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 やがて俺たちは住宅街の一角にあるマンションに辿り着いた。  悪影響を与える思念は送らない。  それがソウルデリバリーの鉄則らしいが、その説明を聞いて合点がいったことがある。  所詮、闇に関わる妖術師でも人の子だ。  突然の痛みで苦しい思いをしたはずなのに、親父の死に顔はうっすらと微笑んでいた。  温かな夢を誰かに見させる。  人の道具となった妖を葬りつづけてきた親父にとって、それははじめて知る充足感だったのにちがいない。 「なるほど。親父もあんな顔して人情肌だったんだな」  貨物庫のドアを開いて封をほどきつぶやくと、彼女が小首をかしげこちらを見た。  死んだ女の思念は青白い炎となって、最上階の窓へと潜り込んでいく。  この後どうなるんだと訊ねると、いい夢を見ると思いますよと彼女は言った。  さて。  気にかかるのは、これからこの軽トラと幽霊をどうするかだ。  どうやら俺には相続しないといけないものがあるらしい。  とかく世の中は面倒だ。  思えば彼女の名前もまだ聞いていない。  軽トラのエンジンをかけると、俺は自分の名を助手席に告げることにした。                                     おわり
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