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そうして、運転席のドアを開けた瞬間だ。
俺は助手席に一人の少女がいることに気がついた。
中学生か高校生で、やけに痩せている。
おそらく病弱故にこの世を去った、といったところだろう。
妖術師の血を引いているおかげで、俺はそういったものが視えてしまうことがある。
「ああ、よかった。やっと気づいてもらえましたね」
見掛けとは正反対に、声が明るいのはなによりだ。
彼女は思った通り死者で、親父とソウルデリバリーをしていたと言った。
無論、そんなものは耳にしたことがない。
けれども、邪気を漂わせているのでもないこの幽霊と親父が何かをしていたというなら、話を聞かないわけにもいかないだろう。
俺は眠たい目をこすり、君は誰なんだと訊いた。
少し離れたマンションの上では、半分に切ったマンゴーのような月が浮かんでいる。
死んだ婆ちゃんが、寝る前に余計になことはするなと口にしていたが、こればかりは仕方がない。
まさか親父が憑き物を野放しにしているとは、俺にとっては予想外のことだったのだ。
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