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ソウルデリバリー。
彼女の言葉によれば、それは路上に残された死者の思念を縁のある人たちに届ける役割のことだった。
誰も彼もがこの世を恨んで死ぬわけではない。
親しい人への感謝、遠くに旅立った後も見守りたい気持ち、別れてしまった誰かを案ずる想い。
彼女と親父は形のないそんな思念を見つけては、術を仕込んだ軽トラの貨物庫に封じ、あらゆる場所に送り届けていたという。
「そういえば、親父の奴、何日も帰ってこなかったことがあったな。あれ、遠出してたのか」
まるで懐かしむように彼女は微笑み、そして肯いた。
話を一通り聞いた後で、彼女に頼まれて俺はハンドルを握っていた。
まだ貨物庫の中には思念が残されているという。
それを届けてほしい、と懇願されたのだ。
「たぶん事故で命を失った若い女の人です。婚約者がいたらしいですけど、直前にケンカしてそれきりだったみたいですね。場所は私が案内しますよ。そんなに遠くない場所だと思うので」
そう言われ、深夜のドライブに出掛ける羽目になったのだ。
軽トラはそもそも彼女の祖父が所有していたという。
鬼籍の人となって売りに出したところで、親父の目に留まったのだ。
大方興味本位といったところだろう。
よくよく見れば、人ならざるものには珍しく、彼女は陽の気をまとっている。
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