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 折衝の末、奏は、大使館から解放される事となった。  その奏が次に身を移した場所は、なんと九条邸である。  元々、九条邸は研究所にも近く、立地は最高だったからだ。  それに何より、九条邸には、七海のプライベートな研究室も完備されている。  それを理由に、七海も九条邸へ住まい続ける事が可能となった。  つまり幸いなことに、七海は住居をA.K機関の施設へ移さなくても構わない事となったのだ。  A.Kの代表を務めている円子を、三人がかりで説き伏せる事に成功した結果だったが……実はこの一件の裏で、随分とヤンも頑張ってくれたらしい。  まさかヤンが、そこまで協力するとは思っていなかった奏と七海は驚いたが、九条だけは納得したようだ。  元々、ヤンがあんな凶行に及んだのは九条にも原因がある。  故に九条は、七海を陥れた元凶がヤンであるにも関わらず、彼の事を憎みきれないでいた。日本で別れた後も、彼は密かにヤンと連絡を取り合っていたのだ。  七海しか目に入らない自分を愛してしまった、ヤンが、どうしても不憫に感じてしまって――――。  だが、 『私は、A.K機関のマルコと懇意にしています。今までの、せめてものお詫びを込めて、必ずや私が彼を説得致しましょう』  最後に会った時、ヤンは九条へハッキリと宣言した。  それまで、すがるような眼で、いつも物陰から自分を見ていたヤンが……初めて自分の強い意志を込めて、そう約束したのだ。  その様子を見て、ようやく九条はホッとした。  ああ、ヤンもようやく全ての呪縛から解き放たれたのだなと。 「――――どうした? 何を思い出し笑いしているんだ? 」 「いや……」  九条は、七海の訝し気な視線に苦笑いを返しながら小さく呟く。 「ただの友人になったらなったで、少し寂しいような気もするものなんだと思ってね」
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