第十一章~妖刀~

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二夜「烝。少し良い?」 山崎「どうしたんや?」 二夜は道場を出たあと山崎烝の部屋に来ていた。 土方と沖田に言った用事とはこの事だ。 二夜「監察方の武器を見せて欲しんだけど。」 山崎「ええけど...」 二夜「戸惑ってるふりはやめなよ。最初から決まってたんでしょ。」 私が監察方に入るという事はもう既に裏の話し合いとやらで決まっていた事なのだろう。 裏の話し合いなどに正体不明、身元不明の人間なんぞ入れるはずが無い。 山崎「バレてもうてたんか...すまへんな。」 二夜「どうして謝るの?」 申し訳なさそうに謝る理由が分からなかった。 山崎「へ?」 二夜「怪しい奴の意見なんて普通は聞くはずないだろ?それなのになんで謝るのかなって。」 山崎「怪しい奴て...自分はそれでええんか?」 二夜「逆にそれ以外に何があるの?」 首を傾げきょとんとしているその姿は、まだ成長しきっていない子供のようにも見える。 そんな彼に聞いてはいけない事だと分かっていながらも山崎は問いかけた。 山崎「逆に逆に聞くで...?更夜は自分の事どう思っとるんや...?」 瞬間、二夜の光のない真っ黒な瞳はさらに黒みを増した。 『どう思ってる?』 そういえば自分の事なんて今まで考えたことなかった。 全て周りが評価していたから。 『化け物』『偽善者』『いらない子』 かつて言われてきた事が頭を過ぎる。 でも何も気にしなかった。 だって自分の事なんてどうでもよかったから。 だって全てが自分ではない... 『他人』 だったから。
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