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Chapter2
ウチら琴浦東高校野球部は、選手は三年生10人、二年生12人、一年生13人の35人。
マネージャーは、一年生と二年生が二人ずつと、三年生はアタシ、宮守詩織(みやもり しおり)一人の計5人。
小、中学の野球人口が減少している中、強豪でもなんでもない公立高校の野球部としては、部員は多い方かもしれない。
城東学園みたいに私立の強豪校だと、100人を超える部員がいるところもザラなんだけどね。
ウチの部員の大半は中学軟式の出身で、硬式のボーイズやシニアの出身者は、各学年に数人だけ。
自分で言うのもなんだけど、ウチは所謂“進学校”で、体育コースも無いので、なかなか“野球サイボーグ”は来ない。
地元で名を馳せた選手は、県外の超有名校にスカウトされるか、県内の甲子園常連校を目指す。
県内だと城東学園のような私立に行くか、“文武両道”を目指すなら、旧制中学の時代から続く甲子園常連校で、県下有数の進学校でもある古豪、橘高校の人気が根強い。
なので、野球も勉強もできる子はみな橘高校に行ってしまい、ウチにははなかなか有望選手は集まらない仕組みになっている。
それでもウチの野球部にも毎年10人前後は入ってくる。
彼らがウチを選ぶ理由は、『近所』『親がOB』『ここならレギュラーになれるかも』『高校野球やりたいけどキツイのやだ』とか、そんな部員が大半。
でもね。
やり始めたら、『負けたくない』『勝ちたい』って思い始めるから不思議。
テキトーに部活してる部員は、何故かいない。
やっぱみんな、なんだかんだ言ったって、負けるのはイヤなんだ。
皆が皆、甲子園を目指しているわけじゃない。
表向きはどこも、『目指せ甲子園』と言ってはいるけど、みな、自分の実力を弁えてる。
その中で必死にもがいているんだ。
一つでも上のステージに上がれるように…
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