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嫉妬
優吾は考えた。
澪は優吾のデリカシーのないところが嫌と言っていた……ならば、変わるんだ!俺!
優吾の澪攻略戦が始まったのである。
「おはようございます、澪さん」
それは翌朝のことだった。
澪は目をパチクリさせて優吾を見た。
「何の遊び?」
「遊びだなんて失敬な!こうして僕が澪さんの登校をボディーガードしに参りました」
「はぁ……」
澪は大きなため息を吐いた。
「全っ然わかってない」
「えっ……ちょ……澪さん!澪ー!置いてくなよー!」
昼休み、優吾は憂鬱な顔で頬杖をついていた。
「優吾、またなんかあったのか?」
相変わらず健二が窺ってくる。
「デリカシーのないところが嫌って言われたからさ、今朝は澪のボディーガードをしようとしたんだけど、全然わかってないってさ」
「俺にはお前の思考がわからないよ」
健二は冷めた目で優吾を見つめた。
「ハッ!」
「な、なんだよ」突如顔を上げた優吾に健二が驚く。
「デリカシーがない、つまり硬派!?」
「……」もはや健二の言葉はなかった。
翌朝、澪が家から出てくる。
「澪、おはよう。さぁ、俺の背中についてこいよ」
「今度は何キャラ?」
澪がはぁっとため息を吐く。
「キャラじゃねぇよ。俺だけの澪だろ」
「じゃ、先行くね」
澪は今日も優吾をスルーして進もうとした。
……が、「澪!!」優吾が叫んだ。
澪が冷たい目で振り返る。
「なぁ、俺、本気なんだよ。本気で澪が好きなんだよ!色々俺なりに変わろうとしたけど、でも……でも本心から澪が好きなんだ!」
俯いて叫んだ後、そっと澪の顔を覗くと、一筋の涙が零れていた。
「澪?」
「だって、優吾……高校に入るなりモテちゃって……イケメンだし……この間も藤堂さんから告白されたって聴いたし……私じゃ釣り合わない……」
「ばっかやろう」
優吾が澪を抱きしめた。
「俺は今も昔もずっと澪が好きだったんだ。他の女なんて興味ねーよ」
「優吾……」
「なぁ、好きだ。澪は?」
「私も……ずっと好きだったよ……」
と、そんな時だった。
「あんた達、家の前でイチャイチャするのはやめなさいよ」
ため息混じりに玄関から澪の母親が出てきた。
二人はバッとお互いに離れる。そしてニッと顔を見合わせた。
いつもの様に学校へ向かう。
ただ一つ違っていたことは、二人の手が繋がっていることだった。
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