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「俺達、付き合っちゃおうか?」
「は?」
「だって幼稚園から今までずっと一緒にやってきた仲だぞ?普通に考えて付き合っちゃうに決まってるじゃないか」
「嫌」
優吾の告白を澪は一蹴した。
「なんで!?」
「一緒にやってきたのはただ単に家が隣だったからでしょ?」
「そうだけど……」
「私、あんたみたいなデリカシーのない男、大っ嫌いなの」
「そんなこと言うなって!本当は俺のこと大好きなんだろ?知ってるから俺」
「はぁ……先行くから」
「待て待て!澪っ!置いてくなよ!」
「二度とばかみたいなこと言わないでね」
優吾がシュンとして「はい」と力のない返事をした。
3時間目の休み時間。
優吾は冴えない顔で窓から外を眺めていた。
「なぁ、健二、俺って不細工かな?」
「は?嫌味か?こないだクラス1可愛い藤堂に告られてただろ」
「確かに藤堂は可愛いけどさぁ~……でも違うんだよ」
「違うって?」
「俺のマイハニーは澪だけなんだ!」
健二はため息を吐いた。
「杉田 澪も可愛いけどさ、お前らずっと一緒なのに全然付き合う素振りないじゃん」
「テレ屋さんなんだよ、澪は。絶対俺のことが好きに決まってる!」
「お前のその前向きな思考が羨ましいよ……」
健二が二回目のため息を吐く側で優吾は燃えていた。
「みーおっ♪」
優吾の声に澪が振り向いた。
「そろそろ帰ろうぜ」
「うん」
今朝は交際を断られたが、家が隣同士で、幼稚園から高2の今に至るまで、毎日登下校を共にしていることは事実であった。
「澪さ、最近俺に冷たくない?」
「さぁ、もともとでしょ」
「ほら!すぐそういうこと言う!昔の澪はもっと優しかったのに、どうして変わっちゃったんだよ!」
「私は変わってない」
「え?」
「変わったのは優吾」
「ええ?」
澪は俯いてしまい、その表情も読み取れない。
だがチラリと下から窺った目には涙が溜まっていた。
「澪?」
「ごめん、今日は先に帰るからっ!」
そういうなり澪は優吾を置き去りにして走って行ってしまった。
優吾は後を追うどころか動く事も出来ずにポカーンとしていた。
「女心がわからない……」
そう小さく呟いた。
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