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はぁ、と白い息を吐き出す。
窓から見える白い世界を見つめ、もう一度ため息を零す。
「……寒いな」
人間をやめ、悪魔になり……魔王の座についてから約500年。
何度目かも忘れた自分の誕生日を思い出して目を伏せた。
「…今年も誰も来ないのだろうな」
来るとしても、玲と渚がプレゼントを持ってくるだけ。
それ以外はいつもと何ら変わらない日々だ。
………そう思っていたのに。
「朱鳥、誕生日おめでとう」
なんて言いながら抱きしめてくるこの男に、目を開ける。
「……こんな寒い日に、何か用か?」
「あぁ。今日、お前の誕生日だったろう?だから、会いに来た」
序列2位の魔王のくせに、よく6位の魔王に会いに来れたな。
…まぁどうせ、こいつが無理矢理入ってきたんだろうけど。
「…ギル、熱い。離れろ」
「わかりやすい嘘だな。こんなに冷え切って。毎年こうやって外を眺めていたのか?」
「そうだが?」
「…これからは毎年、俺が会いに来てやる」
「………」
そっと優しく腹を撫でられる。いやらしい手つきに目を細め、男を睨む。
「どうせ体目的だろう、変態」
「そんなことないぞ?…ほら、おいで」
ひょい、と持ち上げられて椅子から離れる。
俺が座っていた椅子に男が座り、その膝の上に乗せられる。
「…鬱陶しい奴め」
「顔が赤いぞ」
髪も、瞳も、なんて言いながらその一つ一つを指で撫でられる。
「……うるさい」
嫌味たらしく呟き、男の胸に頭を預け窓の外を眺める。
ぱらぱらと白い雪が落ちて、地面に吸い込まれていく。
「…綺麗だな」
なんて呟いて、小さく口元を綻ばす。
いつもと違う、暖かい空気に目を伏せ、余韻に浸る。
来年も、その次も……来てくれたら……、…なんてな。
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