俺たち私たちの思い出

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「空木」 俺が知っている空木にしては大きいその木はどうやら本当に空木だったらしい。あのときはその神々しさに…かは分からないが怯えてしまった俺はその空木をみて、少しまた心がざわついた。 「ヨッシャ!じゃアワタシは今カら文殊蘭空木としテ生きル!」 元気に飛び跳ねるその空木は、植物の名前を知っているからか少し不格好に見える名前に喜び手を天に掲げてはその始めて見る生物、コダマではない、次々と空木に集ってくるなにかとクルクルと回りながら嬉しさを表現していた。 生きる、新しい名前を得て新しい存在になり、生きる。俺はそれに少し憧れ、ツクモに目をやった。ツクモは視線に気づき俺に向かって「あなたも?」と問うた。 思わずうんと頷いた俺にツクモは少し頭を捻らせ未だ肩に乗っているコダマと話し込んでしまった。 その様子に気づいた空木は聿屡ノ名前!?と嬉々としてツクモの回答を待っている。 「…」 思わず俺もゴクリと喉が鳴った気がする。少し日が出てきたのか空は赤く染まっている。 「隔てなく正直で、真っ直ぐ己の正しさを貫かんとするその唯一…」 「…あぁ」 昇った日が木々の隙間からツクモを照らすが、ツクモの圧倒的な黒に光は呑まれ、その闇から光が漏れるように太陽が照る。 「直正…一、で、いいか?」 僕はその初めてと言っていいほどの大きな安心感に飲み込まれ、久しぶりに笑顔を見せた気がした。
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