俺たち私たちの思い出

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「じゃア次はツクモの番だヨ!」 空木は楽し気に、待ってましたとばかりにはしゃいだ。 ツクモ、それはツクモの名前ではなかったのか?疑問が浮かんだが、そもそも空木とツクモの関係を僕は知らない。 後でツクモに訊いてみようか、おこがましいだろうか。調子に乗りすぎというヤツだろうか?でも今は多少の喜びに浸らせてほしいなぁ、なんて。 「…ネェ!イル!」 「…!?」 新しいその一という名前、賛甘聿屡という名前で18年過ごしてきたからか、すぐには慣れないようであった。 慌てて空木を見ると、空木は輝くような瞳で僕を見ては早ク!と急かす。 ツクモの名前、だろうか。そんなことを言われてもすぐに出てこない。ツクモと出会ったのは…俺が空木から逃げ、社にたどり着いたあの時。鮮血のような赤色だと思ったソレは白だった気もするし、今では瞳も圧倒的な黒である。 「…それは?」 「む?」 着物で、袖が長いからか、ツクモをまじまじと見たことが無かったからか気づかなかった、帯紐に付けている小袋。 気分が少し昂っている僕は、まさに夢心地のようなふわふわ感を感じていた。地面は柔らかくもないし、言ってしまえばそのツクモの体つきだって、その袖から覗く腕は細く貧相なのに。 小袋のことを指していることを悟ったのか、ツクモは小袋に手を当てて「これはアングレカムの種子だ」と少し優し気に目を伏せて答えた。 アングレカム、実際には見たこともない白く美しく気高き花。 名前が浮かばなかった僕は、 「じゃあその色、白色の白にしよう」 そう提案した。音は同じだったが、ツクモは満足したようで、僕を見つめては目を閉じた。 ありがとう、そう音が聞こえた気がするが、白の口は動いておらず、白の肩に乗るコダマは相も変わらずシャランと体を揺らし笑顔で僕を見つめ返した。
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