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手探りで探している、その花を咲かせよう
空木と別れ、白と僕はまだ森の中にいた。
空木、その少女とツクモの関係に僕は謎を残したままであったが、また話しかける勇気もなくとぼとぼと白の後ろを歩いていた。
たまに白は脚を止めては空を見上げ、方向を変えては歩き出し、途中休み休みではあるが少し気が滅入るほどに繰り返していた。
森の中で僕は幾度となく変な生物を見ては心臓を飛び跳ねさせていたが、今ではもうそれにも慣れてしまい見かけても、知的好奇心を煽られるだけになってしまった。
また、白は脚を止める。
しばらく空を見上げては動かないだろう、そう踏んだ僕はどこを歩いても出会うその森の生物の生態を観察することにした。
白は空を見て何を考えているのかまるで分らないが、僕は僕で暇を感じていた。目の前にという距離に近づいても、僕が人間ではないことを分かっているからかその鳥のようなものも、毛虫のようなもの、チカチカと黄色く光る生物も僕から逃げようとはしなかった。その毛虫のようなものは、少し不安げに低い木々の後ろで僕を見つめていたが。
一般的にみて可愛いの範疇に収まるのか、微妙な彼らは次第に僕の周りにおずおずと近づいてきては、羽織っているカーディガンとつついてみたりズボンを引っ張ったりしていた。
「テオックス、ユピヌーク、ファイア」
突然に生物と戯れていた僕の後ろから、白はその生物を見、相も変わらずコダマを肩に乗せていた。
テオックス、その鳥は南国に住んでいるかのような色とりどりな体を持ち、ユピヌークは墨のような色をもつ毛虫、ファイアは丸い野菜を輪切りにしたようなその体を発光させて意志疎通を図る。
「全てこの森には欠かせない大事な存在だ」
白はその生物達の方へ肩のコダマを行かせた。その雰囲気は初めに比べると少し丸くなった気がするが、白の持つ特有のその冷たさは失われてはいなかった。
コダマもこの森に住む生物らしい、以前白から聞いていたが、だからかコダマはクルクルと回っては脚をじたばたと動かしテオックスたちと戯れ始めた。木の後ろに隠れていたユピヌークもゆるゆるとこちらへ来ては両手らしきものを上げて喜んでいるようだった。
「白…さん、そのコダマって特別に仲がいいの?」
ずっと疑問に思っていたことの一つ、僕は大きな勇気を出して訊いてみた。
その僕の緊張は無駄だったかの如く、白はなんでもないかのように語り始めた。
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