ミッドナイトMANGOジャージマン

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ミッドナイトMANGOジャージマン

 目覚めると虫になっていた哀れな男の話は、なんとなく知っていた。彼に比べれば、僕は幸せなもんだ。そう、多分。きっと。  僕は、夜になると「増殖」する。  水を掛けると分裂するグレムリンのように、背中からもう一人の僕が生まれる。だが、僕の場合水はいらない。  必要なのは「マンゴー」だ。 「吉田さん、金曜日の夜、六本木にいませんでしたか?」  月曜日の朝、出社すると同じ課の女子社員にそう問われた。 「いや、今週は自宅にこもりっきりだったけど」 「えぇー、そっくりだったんだけどなぁ」 「良くある平凡な顔だからね。きっと、他人の空似だよ。ちなみに、そいつどんな格好してた?」 「それがですね、緑色の学校ジャージみたいなの着てたんですよ。六本木でですよ? 笑えません? でも安心したぁ、あんな不思議系男子が吉田さんじゃなくって」  作り笑顔で答えながらも、僕の胸はざわついていた。     
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