僕ら多分夏だった

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ねえ、と声をかけた。 君は、ん?と返した。 ぼくは満足だった。 みーんみーんと外から蝉の声がして、君が扇風機に顔を近づけながらあーと声を出していた。 「あっついねえ」 「そうだねえ、ぼくも扇風機に当たらせてもらってもいいかい?」 「」 無視されたので窓から吹く風でしのぐことにした。 多分正解。 「ねえ」 とぼくが窓枠に突っ伏しながら声をかけると、 「んー」 と君が扇風機の強さを一段階あげて応えた。 「アイス食べたいねえ」 「そうだねえ」 でもぼくも彼女も動かない。 「冷凍庫にあったかな」 「ないね」 「そっか。買いに行く?」 「ありがとおー」 「ぼくが行くって意味じゃないんだけど」 「あらそお、私と行きたいのかしら」 「そうですあなた様と行きたいのです」 「仕方ないなあ」 そうしてよっこいしょと老夫婦のように腰をあげ、僕らはお揃いのサンダルを履いて外に出たのだ。 終わり。
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