14章 スタジオ入り

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・ “気難しい──” 楠木さんの言った言葉とはかなり違う感じだ。 撮影時の強引な振舞いとは違い、意外にプライベートは紳士だ── 「ゲプ…」 「……っ…」 大盛りスープで満たされた胃がニンニク臭い空気を押し出した。 マリオは一瞬見開いた目を向ける。 「ぶっ…」 「失礼しました…」 「次は旨い肉の塊をご馳走するから」 肩を強く揺らしながらそう漏らす。 「君の電話番号を…」 「次に縁があったらその時はまたご馳走になります」 「……──」 マリオの言葉を遮り言ったあたしを一瞬驚いたように見つめる。 「──……なるほど…なかなか面白いね倉田さん」 「……?」 「いいよ、じゃあ次に縁があったらね。今日は何気に楽しかったよ」 意味深な笑いを含みそう言って手を振ると車に乗り込む。 「じゃあ次の縁を僕から作るから」 「作る?」 「そ、作るから。じゃあまた…」 マリオはその言葉を残して車を走らせた…。 「作る?」 どうやって? あたしは首を傾げて上に目を向ける。下から部屋の窓を見上げると明かりが付いている。携帯を手にしてみれば、着信と受信の二つの光が点滅していた。 もちろんストーカー夏希ちゃんからの発信だ。 ⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒ どこいるの?喫茶店終わるの遅くない? ⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒ 「………」 疑いをかけた文字が並んでいる。 もっと心配しやがれってんだ! そう思いながらも満腹になったお陰かあまり腹は立ってこなかった──
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