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「ただいま」
「──…おかえり」
玄関を開けたあたしを見ると少ししてから返事を返してきた。
物言いたげな夏希ちゃんを素通りして自分の部屋に入り服を脱ぎ掛けたら後ろでドアの開く音がした。
「今、着替え中」
「いいよ着替えて」
言いながら夏希ちゃんは腕を組んですぐ傍の壁に寄り掛かった。
「晶さんは俺のだから俺の晶さんが着替えてるとこいても別に問題ないでしょ?」
着替える手を止めたあたしに向かって夏希ちゃんは少し怒った口調で権利を主張してくる。
「………」
「晶さん…」
無視したまま着替えを始めたあたしに呼び掛けてきた。
「この間からなんかおかしくない?」
「なにが」
「この間、俺が喫茶店行った日からおかしいよ」
「………」
着替えを済ませて夏希ちゃんの前を通る。
すれ違い様に夏希ちゃんは無言で腕を掴んできた。
「ちょっと色々あったって言ったじゃん」
「それだけが理由に思えない」
「……」
「俺が待ってるのわかってて遅く帰ってきてる気がする」
「……気がするだけでしょ?」
「……」
「なんでもないから…」
「──…じゃあさっきから匂う男物の香水の香りはなに?」
「……──」
「なに?」
夏希ちゃんは真っ直ぐに見つめて追及してくる。
散々、撮影でマリオと絡んだせいか淡いムスク系の男物の香水が身体に染み付いていたらしい…
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