14章 スタジオ入り

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──── 「聖夜、あの話きたぞ。やってみるか?」 「きた?」 CMの収録を進めるスタジオで楠木さんが休憩をする俺にそう声を掛けてきた。 「撮影はどうだ?」 「虎太朗が利口だから順調!たぶんすぐ終わる」 今日は寒い時期となったらお約束── 暖炉のあるヨーロッパ調のキッチンで白いエプロンを着て歌いながら鍋をかき混ぜる。 クリームシチューのルウのCMだ。 虎太朗の舌っ足らずな歌声にハモりながらシチューを作る姿を撮影しているわけで… 小さいながらプロ根性の虎太朗のお陰で撮影はNGもほとんどなくスムーズに行われていた。 「職種は希望通りでよかったんだろ?」 「うん」 応えながら見せられたスケジュールを手にとる。 “頼りないっ…” 「………」 晶さんに言われたあの言葉は何気にショックだった── 一般人のことは確かに俺にはわからない── どっぷりこの世界に嵌まった身だから、外の世界を全く知らない。
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