14章 スタジオ入り

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・ ある意味、井の中の蛙だ。 芸能界も荒波の海ではあるけど結局は隔離された世界── 俺は大海原を知らない……。 だから努力するわけで… この中に居ても外を知る方法はいくらでもあるから。 俺はいつか晶さんと一緒に夢を叶える為に努力したいわけで── 「決まってるなら伝えておくから、じゃ撮影頑張って」 次の仕事内容の確認を取って楠木さんは切り上げる。 「どっかいくの?」 「ああ、舞花のドラマ撮影の様子見てから新人のCM録りに付きっきりになる」 「なる、行ってらっしゃい」 手を振り合うと楠木さんは足早にこの場を後にした。 「新人で早速CMか…やるな」 俺は呟いた。 楠木さんが見つけたなら持って生まれた“光る才能”てやつがあるはずだ── 事務所に入って直ぐにCMの仕事を貰えるなんて、そうそうない。 てことは── そいつは“もってるヤツ”ってことでもある── 運と才能。 この世界では必要不可欠な言葉だ── 「会ってみたいかも…」 何となく興味が沸く── 「藤沢さんシチュー皿持ってください。──…じゃあイキマスっ!」 そう思いながら俺はカチンコの合図と共に、エプロン姿でシチューを持って虎太朗とくるくる舞って踊った……。
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