14章 スタジオ入り

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・ 人混みの雑踏。 あたしはまたそこへ足を踏み入れていた。 楠木さんに言われた通り、前回オーディションをしたビルの五階へとあたしは向かう。 スットキングのCMなんてお金掛けて宣伝するほど需要あるのかと思ったけど、この冬の時期に掛けてはかなりの売上数値を打ち出すらしい… 寒さ対策&お洒落アイテムとしての需要も重なり高値でも売れるのだとか…… そして言われた部屋の扉を開けてみれば初めて目にする空間が広がっていた── 黒い煉瓦の壁 路地裏のような背景と、真ん中には大きな四人掛けの真っ白なソファが置かれている。 あたしは渡された真っ赤なボディコンのピッタリとしたワンピースの衣装に着替え、片隅で声が掛かるまでスタイリストさんとスタンバイしていた。 「晶さんごめん、間に合った?撮影まだだよね?」 少し遅れてスタジオに着いた楠木さんはあたしの生足を眺める。 「ストッキングはまだ?」 「今から履くみたいです」 渡されたばかりのストッキングを一枚布のカーテンの裏で履いてあたしはセットのソファに腰を卸した。 先ずはスタンダードな編みタイツを履いての撮影。 「足組んで上半身を腰からゆっくり右に回してねー」 カメラマンが手を上げて動きを誘導する… どこをどう撮っているのかわからないほど連写でシャッターが切られ、瞬く間にフィルムが床に散らかっていた──
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