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年が明ける二日前の大晦日前日、朝起きると母が急に祖父母の家で、つまり自分の両親に看病してもらうと言って少し怒った様子で家を出ていった。
父にはあとから聞かされたことだがその日の前の夜に母は以前のようにお腹が痛いと泣きわめいていたそうだ。それに対し父さんは
「ごめん、本当に眠いんだよ。頼むから寝かせてくれ」
と言い放ってしまったそうだ。
その言葉で母は自分が家族に迷惑をかけていることを悟って受け入れてくれる祖父母に看病してもらいに行ったのだろう。
確かにその日から父はよく眠れるだろうが本人は母に対して言ったことをかなり後悔しているようだった。
母が祖父母の家に行った日の夕方、一本の電話が入った。
「何か幸子がすごい苦しんでるんだけど!? どうすればいいですか!?」
祖母の声は困惑と動揺に満ち溢れていた。その電話を聞くや否や父は祖父母の家まで救急車を向かわせ、自分も車を走らせた。
何が起こっているのかわからなかった。むしろ、わかりたくなかった。今、自分の母親がどんな状態で危ないのかそうでないのか、死ぬのか死なないのか。そんなことを一気に理解し、整理できるほど中三の頭は上手くできていない。
夜には父は祖父母に病院での付き添いを任せ家に帰ってきた。その顔は今まで見た父のどんな顔よりもやつれて見えた。
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