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慌ててすれ違うゲストと無駄に笑顔を交わしながら
僕は征司の姿を探した。
時間はかからなかった。
あんなに目立つ人。
どこにいても隠れられない。
どこにいても紛れる事さえできない。
美しい花園に佇む
クラッシックなグレイのスーツ。
どんな男より立派に見えて
其の実――誰より孤独で物憂げな背中。
あるいはそのギャップこそが
あの人の魔力ともいうべき吸引力。
僕はそろそろお開きになるパーティーの
人波に逆らって歩き出す。
およそ僕らにふさわしからぬ
リストの愛のピアノ曲が流れる中。
僕は濡れた芝を踏み
一歩また一歩と背後から征司に近づいた。
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