真夜中ゼミナール

13/13
前へ
/13ページ
次へ
「先生」  薄れる意識の中、誰かが僕を呼ぶ。  六道か?  いや、この声は―― 「結城か?」 「うん」  目の前には確かにあの結城凛。  しかも気がつけば目の前には不思議な世界が広がっている。  見渡す限り、白、白、白。厳しい雪原のように思われるのに、暖かく、穏やかで、心地の良い空間。  そんな世界で結城凛は、 「あたしだけじゃないっすよ。ほら」  と僕の後ろを指差した。  振り返る。  そこには僕がこれまで授業をしてきた――あの、深夜に現れる生徒達。 「お前ら……」 「みんなお礼が言いたいんだって。先生、勉強を教えてくれてありがとう――って」  胸が締め付けられる。  僕はこの子達を利用していた。自己満足のために利用していた。それなのにお前たちはこんな僕に感謝をしてくれるのか。 「幸せだの不幸だの、そんなことを軽く口にする人間は全員詐欺師だ。自分が幸福かどうかなんて死んで初めて分かるものさ」  その言葉の意味を、僕はようやく理解することができた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加