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怪物はこんもりとした黒いシルエットになっており、明確な姿は見えない。しかし、人ではないことを僕は確信した。そして、事もあろうに、その怪物は、ママを襲っていたのだ。
ママに馬乗りになり、パニック映画の化け物のように、ママを貪り食っていたのだ。木が軋むような音は、怪物が貪る度に、上下に揺れ動き、ベッドが悲鳴を上げている音であった。
苦しそうな呻き声は、ママが発している。当然だ。怪物に食われているからだ。
僕は急に怖くなり、震えながらその場を離れた。何とか音を立てずに自室へと戻ることに成功し、ホッと息をつく。
僕は畳の上にしゃがみ込み、頭を抱えた。
つい今しがた見た光景を頭に思い出す。
あれはなんだったのだろう。なぜあんな怪物がパパとママの寝室にいたのか。
そして、僕は、その怪物に襲われていたママを放っておいて、おめおめと逃げ帰ってきたのだ。男としてすたる行為だ。情けない。
僕は、顔を上げ、部屋の扉に耳を当てた。まだ音は聞こえていた。むしろ、さっきよりも音が激しくなっているような気がした。
僕はそこではたと気が付く。パパはどうしたのだろう。部屋の中にはパパらしき姿はなかった。怪物に食べられてしまったかもしれない。
僕は、ベッドに飛び付き、毛布を頭から被った。震える体を抱き、じっとする。
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