真夜中のシ役所

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「さてと、コンビニでも寄って朝ごはん買ってくかなあ……社会人になったら、仕事帰りに一杯飲んでく! ってやつを一度やってみたかったんだけど、これがいまだにできてないんだよね~。この時刻じゃお店やつてないし、もしやってても、こんな朝っぱらからお酒飲んでちゃ世間的にもうダメな人だろうからなあ……」  普通の人がアフター5でやることをアフター7(朝の…)でやらなきゃならないところもまた、なんとも悲しいものなのであるが、それでもそんな日々が続く内に、わたしも死民課の奇妙な仕事と、この昼夜逆転の生活にすっかり慣れ親しんでいった……。  今では「さすが、あの閻魔王庁で官吏していた小野篁さんのご子孫だ」と同僚や死民の方から言ってもらえるくらい、バリバリ仕事をこなしている。  …………だが、早いものでほぼ一年が経ち、来年の希望を職員課に提出する時期になると、わたしは書類の「異動希望」欄に迷わず丸をして出した。  別にもう死民課の仕事が嫌なわけでもないし、昼夜逆転の暮らしもそれほど苦痛ではない。  でも、やっぱり友達や他のみんなと同じように、昼間は朝から生きてる(・・・・)人達相手に仕事して、夜になったら飲み行ったり、カラオケ行ったり、合コン行ったり、同じ世代の仲間達と遊ぶ、ごくごく一般的な社会人生活というものを送ってみたいのだ。  そして、三月末の、役所全体の移動や昇進などが発表される運命の日……。 「おい、篁くん。君に移動出てるぞ」  いつものように真夜中の市役所へ出勤すると、わたしの顔を見るなり加茂課長が、辞令の紙を手にそう声をかけてきた。 「えっ! ほ、ほんとですか!」  その待ちに待っていた報告を耳にし、わたしは深夜とは思えないテンションで胸を弾ませながら課長のもとへ駆け寄る。  やった! 一年遅れになっちゃったけど、これでついに念願だった普通の新米社会人ライフを送ることができるのだ! 「しかし、まだ一年の新米くせしてすごいな。こりゃあ、完全に出世コースだよ?」  駆け寄るわたしに、課長は辞令を手渡しながら、感心するようにそんな言葉を付け加える。 「出世コース……?」  よく意味はわからなかったが、そのどう聞いても〝うれしいお知らせ〟としか思えないような台詞にワクワクしながら、辞令の紙の上へ視線を落とすと、そこには……。
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